(1)我が雑本より探す吉岡憲

  画家吉岡憲についていろいろ書きたいことはある、彼の作品と出会ってから30年、資料も随分集めたが、いざ原稿用紙に向かうと筆が止まってしまうのだ。いつもの『気まぐれ美術館』調で書き始めると、肝心な事を書かないうちに与えられた紙面が尽きてしまうだろう、「次回でケリをつける」という訳にもいかないし・・・やはり私の場合、古書雑本の中に見え隠れする吉岡憲の後ろ姿を追跡したほうが似合うようだ。

 吉岡憲の画家としての方向牲を確立させたのはハルビン時代といえるのですが、私の部屋からは、昭和8年刊の『ハルピン女』(著者:群司次郎正)と昭和15年刊の『満州紀行』(著者:島木健作)がでてきました。(この二冊随分まえから書棚にあるのだが読んだのは今回初めてである。ハルビンに関する情報を得ようとしての入手、つまり吉岡憲追跡で仕入れた物には違い無いのだが、あまり役にはたたなかった)。

 そして最近、小牧正英『晴れたそらに・・・舞踏家の汗の中から』(1984)と、岩野裕一『王道楽土の交響楽』(1999)、そして北海道立近代美術館の図録『松島正幸』を購入。我国バレエ界の重鎮・小牧正英、吉岡憲、さらに共通の友人でもある画家松島正幸らの青春伝説を感じ取り、当時のハルビンの芸術的環境とその水準を知りたかったのだが・・肝心の憲の名前は松島正幸図録の年譜の戦後長崎でのグループ展の所にだけ出てくる。

 東洋のパリ、極東の歓楽境・植民都市ハルビン、魔都ハルビンの魅力は朧げに感じることができただけ、音楽や舞芸の面での調査研究はあるようだが美術面では未開拓か、今後の学研の皆様の奮闘に期待しましょう。イヤイヤありました、提灯持ちの手暗がりとでもいうのか、『気まぐれ美術館』の中です、「開かずの間」があったのです。「芸術新潮」の1974年6月号、146ページをご覧ください、小牧正英氏の記憶による洲之内徹作図の「吉岡憲パレット」がでてくるのです、ただしこれは雑誌の方にのみ登場、単行本や文庫のはうでは削除されています。いつ頃使用のパレットなのか気になるのですが洲之内さんはそれには触れず作図に夢中、特徴ある字体でバランス良く絵の具の名前を書き込んでけっこう楽しんで描いているようですヨ。それで時間切れになったのですね、小牧と憲との交流には触れることが出来なかったのでしょう。

(続く)

Yoshioka コラム

Main Yoshioka